D級パワーアンプの制作

パワーアンプがほしくなったのでD級増幅器に挑戦してみました。
アナログ式でも良かったですが、設計が面倒で大規模になってしまうので却下しました。

D級増幅って何?
増幅器の種類にはA、B、C級がありますが、これらはアナログ方式です。
D級はPWM(Pulse Width Modulation、パルス幅変調)を応用したデジタル方式です。

代表的な増幅の過程を示します。
入力信号はコンパレータによって振幅がパルスの幅に変換されます。
この時点でデジタル信号に変換されています。あとは振幅を上げれば増幅は完了します。
しかし、出力はまだデジタル信号のままです。スピーカで再生するためにはアナログ信号に変換しなければいけません。
そこで復調回路を使います。
PWM信号はLPFを通すだけで復調されます。

PWMって何?
先ほども書きましたが、パルス幅変調の略です。
変調といえばラジオでおなじみAM(振幅変調)、FM(周波数変調)がよく知られています。
これらは変調波に正弦波を使いますが、PWMではパルスを使います。
このパルスのデューティー比(Hレベルと周期の比)を変える事によって情報を伝えます。
PWMはデジタル回路から直接アナログ回路を制御できるので、D級増幅器のほかに電源、モータの制御に使われます。

回路構成
Zoom
今回もICのデータシートにある回路例から作りだしました。
これはワンチップICなので特に考える必要はありません。
定数計算が必要な個所も2箇所だけです。

入力にあるカップリング回路の定数は開発キットにある値から取りました。
内部回路を見ての通り、入力はオペアンプによる反転増幅器となっています。
そのため、IC全体の電圧増幅率もここで決まります。
計算式はデータシートにあります。
電圧増幅率は7.1、低域カットオフ周波数は約8Hzとしました。
家で使う程度なら十分でしょう。

普通、音量を変えられるように入力にボリウムを付けます。
しかし、DJミキサからモニタ出力の音量を調整できるので省略しました。

出力LPFの定数は繋ぐスピーカのインピーダンスに合わせないといけません。
LPFの構成も定数もデータシートに書いてある通りです。
計算の必要はありません。

動作設定はステレオ、クラシックPWMモードだけです。
ミュート、シャットダウンの設定もできますが無視しました。

電源は9VをACアダプタから供給としました。
IC自体は8〜24Vという広い電圧範囲を持っていますが、扱いやすい電圧として9Vを選びました。
しかし、動作設定系のピンはCMOSレベルなので5V付近への変換回路が必要です。
プルアップ抵抗はまとめてしまいました。
電源レギュレータを使うのが適当ですが、電流容量は不要なのでツェナーダイオードだけで済ませました、が・・・。

ツェナーダイオードの破壊?
電源を入れ、各所の電圧を見ていたのですが、まず消費電流が0mAであることに気が付きました。
よく見ると5V系の部分だけ電圧が約1Vになっていたのです。
電流制限抵抗の値を間違えたのかと思い抵抗を変えたのですが、なぜか同じなのです。
よくよく見るとダイオードの向きが逆でした。基板設計の時に間違えたようです。
順方向で使ったせいで最大電流を超え、破壊、ショートとなったと言えます。
気を取り直し、正しい向きで取り付け直しました。
ツェナーダイオードの電圧を測りながら徐々に電圧を上げ、ツェナー電圧を超えたところでまた問題発生。
一旦4.7Vが出たものの、電圧はどんどん下がって1Vとなってしまいました。当然破壊しています。
ついでにICも破壊してしまい、仕方なく三端子レギュレータに切り替えました。
いけない事ですが、原因不明のまま放置しています。

ICについて
使うICはステレオD級増幅ICのMAX9736Aです。
ステレオモード、8Ω負荷、電源12Vにて最大8Wの出力があるようです。
パッケージは7mm角のTQFN32でリードはありません。
ここが基板設計を難しくしている要因ともなっています。
リードが無い代わりに、端子間にハンダが染み込まないのでリード付きよりもハンダ付けは簡単でした。

三端子レギュレータはおなじみの78L05を使いました。説明は不要でしょう。

プリント基板について
一番厄介な部分です。
回路設計が単純な代わりにここが難しくなっていますが、これも開発キットの基板を参考にしました。
ICのグラウンドにAGND(アナロググラウンド)とPGND(パワーグラウンド)の二つがあり、これらを区別しなければいけません。
アナログ&デジタル混在回路の基板設計と同じように、それぞれ領域を与え、さらにデータシート通り1点で両方を繋げます。
ICの裏側は放熱用に大きな端子があります。データシート通り、PGNDに接続します。
しかし、ICの真裏なので手ハンダではハンダ付けができません。
そこで、ドリルで穴をあけ、そこからハンダを流し込みました。
ICのピン配置のおかげで、ほぼ左右対称なプリント基板となります。

部品について
チップ部品で構成するつもりだったのですが、後で交換できるように信号系はリード付き部品にしました。
フィルムコンデンサは各種安定性がよく、音質もいい(らしい)ので信号系に使いました。
耐圧は高いほど音質が良くなるらしいです。
後はコストの関係上、その辺にある部品で済ませてあります。

LEDは信号機に使われる青緑色の物を使いました。
かなり効率が良く、1 mA程度の電流で煌々と光ります。

種類 型番/規格 個数  備考 
IC MAX9736A マキシム社製
ツェナーダイオード BZX84-C4V7 1 4.7 V、350 mW(不使用)
抵抗 15 Ω 4 アキシャル型1/4 W
9.1 kΩ 1 アキシャル型1/4 W LED用
20 kΩ 4 アキシャル型1/4 W
100 kΩ チップ型 
電解コンデンサ 330 μF 1 耐圧は35 V以上、1000 μF程度あってもよい
フィルムコンデンサ 1 μF 2 耐圧は自由(高い方がよい)
0.15 μF 10 耐圧は35 V以上(高い方がよい)
積層セラミックコンデンサ 0.1 μF 4 チップ型
1 μF 4
  10 μF 1
パワーインダクタ 15 μH 4 耐電流3 A以上
RCA端子 シャーシ取りつけタイプ 2 赤と白
スピーカ端子 シャーシ取りつけタイプ 1 ワンタッチ型を使用
スイッチ 1 丸型ロッカスイッチを使用
LED パイロットランプ用
筐体について
タカチのアルミケース(型番は忘れた)を使用しました。
前面にはスイッチとLEDしかないので正面から見ると非常にシンプルな仕上がりです。
中身は整理していないので配線がゴチャゴチャしています。
ZoomZoomZoom

音質について
気になる音質ですが、良いのか悪いのか全く分かりません(爆
癪に障るような音ではないことは確かです。

戻る
inserted by FC2 system