Audacityを使ったマスタリングのやり方(盤起こし編)
録音&マスタリングの練習として「盤起こし」をやってみましょう。
「盤起こし」とはレコードの音をPCに取り込むことを一般に言います。つまり、ここではデジタルリマスタをやります。
まず、ターンテーブルを調整しましょう。ターンテーブルやレコードプレイヤーを持っていないなんて人は知りません。 針先をクリーナーで掃除し、針圧とアンチスケーティングをカートリッジの適性針圧にあわせておきます。 ピッチロックスイッチで再生速度を戻すことを忘れずに。 レコードもクリーナーで掃除しておきます。あればレコードスタビライザーで反りを抑えるといいでしょう。 |
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ターンテーブル〜PCの接続はいくつかありますが、ターンテーブル→DJミキサー→PCの接続を前提に書きます。 ミキサーの「REC Out」や「Digital Out」から、PCの録音入力へ繋ぎます。 ミキサーのゲインはあとで設定します。 |
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Zoom | PCの録音デバイスの設定を開いてください。 レベルは入力時、PCのレベルメーターが0dBを超えないように下げておきます。 「サンプルレート」はできるだけ上げてください。上げ過ぎるとPCに負荷がかかり、音飛びが発生します。ほどほどに。 マイク入力から録音するときは「マイクブースト」をオフにしないと音が歪みます。 |
・レベルメーターに0dB以上の目盛がある?
基礎編で「0dBを超えると音割れが発生する」と書きました。
ミキサーなどの音量には+の目盛があるはずです。
ですが+の領域に入っても音割れはしません。矛盾しますね。
これは単なる考え方の違いで、PCなどのデジタルデータでは扱える最大の数値が決まっています。
Audacityの通常モードは16ビットですので、最大値は符号無し10進数で65535、符号有りでは32767です。
これが基準となっています。
ミキサーなどのアナログデータや回路では当然、最大値に決まりはありません。なので+の領域が存在します。
また、音割れ発生(飽和)の条件は増幅器の特性によって決まるので、必ずしも0dBで音割れは発生しません。
大電力を流せる増幅器なら電圧が上がっても飽和せず、逆に小さいとすぐに飽和してしまいます。
ですが、ここでは出力先にデジタル回路が待っています。人間が聞くわけではなく、過入力は好ましくありません。
Zoom | Audacityの録音ボタンを押します。余計な部分が録音されてしまうのですぐ次へ。 |
当たり前ですが、曲が始まる前の部分に針を落とします。頭出しの必要はありません。 ターンテーブルにリフターがある場合、利用すれば針をそっと落とすことができます。 |
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Zoom | 曲が終わったら録音と再生を停止します。 |
Zoom | 波形を見ると、波形が線対称になっていなかったり、飛び出ている部分が見えると思います。 これは増幅器のオフセット電圧や針の振れ方など、アナログ部分から来ているようです。 |
Zoom | 空白など、関係な部分を削除し、全体を選択→効果→「正規化」 を選び、そのままOKを押します。 これでオフセット電圧は打ち消されます。 |
先の正規化で波形が減衰されたので、「増幅」を選び最大化します。 ですが、思うように音は大きくなりません。最初に見たスパイクのせいです。 |
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Zoom | おそらく、LRチャンネルの音量バランスがくずれていると思います。 LRチャネルを分割してチャンネルごとに作業を進めます。 |
Zoom | 音が大きいチャンネルを基準にすると進めやすいです。 片方のチャンネル全体を選択、そして「Hard Limiter」を使い、スパイクを押しこみます。 片方のチャンネルの全選択は、チャンネルバランス下のどこかをクリックすればできます。 「dB Limit」へ適当に数値を入れ、OKを押します。 |
もう一度「増幅」を行うとさらに音が大きくなることが分かります。 音が大きそうな部分を再生してみて、メーターにクリッピングの印が出ていないか確かめます。 出ていなければ、さらにリミッター、ゲインと繰り返し、クリッピング発生直前まで音を大きくします。 クリッピングが発生してしまったら、リミッターをかける前の状態まで戻り、「dB Limit」の値を大きくしてリミッターをかけましょう。 |
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もう一方のチャネルにも同じ操作をします。基準にしたチャネルと音量が同じになるまでやりましょう。 あとは「スレテオトラックの作成」をし、好きなファイルに出力すれば終わりです。 |
・曲の後半で音質が悪くなる?
自分自身は体験したことはありませんが、そんなことを聞いたことがあります。
レコードの溝は常に円を描いていますが、一部分だけ拡大してみるとほぼ直線のように見えます。
ですが、円なので内側になるにつれて曲線に変化することになります。
溝が曲線、つまり曲がっていると、思うように振動を書き込んだり、拾うことができなくなります。
よって曲の後半で音質が悪くなると考えることができます。
このように考えると、回転数も音質に関係することになります。
回転数が多ければ一定時間に進む距離も長くなり、溝はより直線に近づくことになります。
つまり33rpmより45rpmの方が音が良いと言えます。
いずれにしろ、レコードの特徴にすぎません。あきらめましょう。