S/PDIF→USBアダプタの制作
多くのDJ用機器にはデジタル出力なるものが付いています。
これを使えば機器との間にアナログ回路を経由せずに、直接パソコンに取り込むことができます。
しかし、出回っている多くのオーディオデバイスにはデジタル入力は付いていません。付いていてもかなり高額(数万円)になってしまいます。
じゃあ自分で作ってしまえばいい訳です。
・S/PDIFって何?
ソニー社とフィリップス社が共同開発した音声用デジタル通信規格です。
光ファイバとRCA同軸ケーブルの両方があります。
DJ用機器についているものはほとんどRCA同軸です。
後で書きますが、実は同軸出力にトラップが仕掛けられていました・・・。
回路構成
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構成はICのデータシートにある回路例から作りだしました。
ワンチップICのおかげで周辺回路は抵抗とコンデンサ、電源はバスパワーだけで済みます。
本来ならデジタル入力にパルストランスを付けて絶縁しますが、75 Ωの終端抵抗とカップリングコンデンサだけで済ませました。
アナログ入出力は使わないのでオープン、またはプルダウンしておきました。
水晶発振器についている負荷コンデンサの容量は発振器のデータシートを読み、適正な値にしましょう。
C11はバイパスコンデンサなのでIC2の14番ピンのすぐ近くに設置しなければいけません。
後で気づいたのですが、C2もおそらくバイパスコンデンサだと思われます。
今回は電解コンデンサを使いましたが、高周波特性の良い積層セラミックコンデンサをお勧めします。
バスパワーからLEDを点灯させてパイロットランプにしました。
当然ながら、LEDの制限抵抗は使うLEDに合わせて値を決めてください。今回は高輝度LEDのまぶしさを抑えるため大きめにしました。
しかし、後述のように端子を別回路の電源コネクタに使ってしまったので、パイロットランプは取り付けていません。
また、!SSPND端子は動作中にHレベルになるので、ここから信号を取り出してもいいでしょう。
その場合はトランジスタを噛ませて直接電流を取り出さないようにします。
同軸S/PDIFのトラップ
初めは入力にあるバッファ無しで使っていたのですが、何故か動きません。
悩みぬいた揚句、オシロで出力の波形を観測してみると・・・
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見ての通り、交流パルスが出力されていたのです。振幅はは1 Vまたは3.3 Vです。
(T.92 USBの出力は途中で不整合が起きているのか、歪みまくっています。ですがS/PDIFの信号として成立しています。)
無負荷出力の最大値は0.5 V、さらに終端抵抗があるので、実際の最大値は半分の0.25 Vとなります。
PCM2902のHレベルのスレッショルド電圧は約2.5 V。動くわけないです。
普通のデジタル信号は0 V〜5 V程度の直流パルス、だと思っていたのが間違いの元と言えます。
そこでロジックゲートを使ったバッファを間に入れました。
入力から一つ目のゲートはゲイン約100倍の反転増幅器の役割をしています。しかし、出力が飽和するのでVdd(=5 V)への昇圧回路と言えます。
次のゲートは反転した出力を戻すインバータであり、オフセット電圧の消去、波形整形の役割もあります。ここの説明はいらないでしょう。
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これでHレベルが5 V、Lレベルが0 Vの信号になり、PCM2902のスレッショルド電圧を満足します。
ICについて
PCM2902(E)はUSB、DAC、ADC、DDC付きワンチップICです。
新しいPCM2902Eもありますが同じものと思われます。
このICだけでデジタル/アナログとUSBを双方向で変換できます。
周辺回路はほぼ不要です。機能をフルに使う場合のみ、別途の電源レギュレータが必要です。
今回はこのうち一つ、デジタル入力のみを使います。
アナログ系の音質にも定評があるようで、追加回路を用意してもいいでしょう。
一般的にUSBは敷居が高く、制作難易度は非常に高いと言えます。
ですが、ワンチップICというだけあって設計に関しても全く難しくありませんし、定数の計算すら必要ありません。
74HCU04はおなじみロジックゲート、バッファなしインバータです。
1ゲートに対してFETのインバータが1組入っています。
各社から同じ規格の物が出ていますが、今回はST社の物を使いました。
発振回路やヘッドホンアンプとして使われるように、デジタルではなくアナログ回路の役割も果たします。
74HC04は内部回路が違う(FETが2組多い)ので使えないと思われます。
部品について
今回はICを交換できるようにピッチ変換基板を使い、配線ミスをなくすためプリント基板を作りだしました。
部品点数が少ないのでユニバーサル基板でも十分作ることができるでしょう。
ケースに入れる場合、USBコネクタの先を基板よりも出すとケースとの隙間が埋まり、見栄えが良くなります。
ただし一つだけ問題があります。
このICは表面実装(SSOP28パッケージ)でピンピッチが0.65 mmしかありません。
表面実装に慣れていない人にとっては鬼門と言えます。
YouTubeで「
soldering smd」などと検索すればハンダ付けのやり方がたくさん出てきます。
種類 |
型番/規格 |
個数 |
備考 |
IC |
PCM2902(E) |
1 |
TI/バーブラウン社製 |
|
74HCU04 |
1 |
ブランド等は自由 |
抵抗 |
2.2 Ω |
1 |
抵抗は全て1/4W |
|
22 Ω |
2 |
|
|
150 Ω |
2 |
75Ω1個でもOK |
|
1 kΩ |
1 |
LED用 |
|
1 MΩ |
1 |
|
電解コンデンサ |
1 μF |
4 |
耐圧は16V以上 |
|
10 μF |
2 |
|
セラミックコンデンサ |
22 pF |
2 |
水晶によって変えること |
積層セラミックコンデンサ |
0.1 μF |
2 |
チップ型を使用 |
|
1 μF |
1 |
C2用 |
水晶発振子 |
12 MHz |
1 |
|
LED |
青 |
1 |
色はお好みで |
USBコネクタ |
Bタイプ |
1 |
ミニBなどタイプはお好みで |
RCA端子 |
シャーシ取りつけタイプ |
1 |
色などはお好みで |
ピッチ変換基板 |
SSOP28→DIP28 |
1 |
ダイセン電子工業社製 |
ピンヘッダ |
|
28ピン分 |
変換基板接続用 |
抵抗のような受動部品はその辺のパーツ屋でも入手可能です。
PCM2902は特殊なICのため通常のパーツ屋では入手できないでしょう。
Digi-Key、
チップワンストップ、
Leocomなどの個人でも購入できる大口業者で入手できます。
合計金額は3000円もかからなかったと思います。
高いのはPCM2902だけなので、部品をたくさん持っている人ならさらに安く作ることができるでしょう。
筐体について
その辺に転がっていたケースを拝借しました。
追加回路を想定して、RCA端子を付ける余裕を取ってあります。
加工精度と見栄えに若干不満を残す結果となってしまいましたが、良しとしましょう(爆
ついでに変換基板のピッチを間違えたせいで下のピンヘッダが歪んでいます;
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