S/PDIF→USBアダプタの改造

前回作ったS/PDIF→USBアダプタには、まだまだ機能が残っています。
ちょうどアナログ出力が欲しい所だったのでDAC出力を追加してみました。

出力の取り出し方
PCM2902のDAC出力からそのままRCA端子へつなげればいいだけの話ですが、回路例を見ると「LPFを繋げ」となっています。
パッシブフィルタならすぐにでも作れますが、次にパワーアンプを繋げる事を考えるとPCM2902の出力容量が足らなくなるかもしれません。
それに加え、回路を設計する面白味が全くないので今回はオペアンプ型のアクティブフィルタを使います。

また、信号はピッチ変換基板の端子から取り出し、電源はUSBバスパワーの5Vを使います。
基板の上から配線を引き出すので美しくないですが、背に腹は代えられません。

パッシブフィルタとアクティブフィルタの違いは?
パッシブ(Passive)とは「受動」の意味で、抵抗、コンデンサ、コイルなどの受動素子を使ったフィルタです。
アクティブ(Active)とは逆に「能動」の意味で、アクティブフィルタは受動素子に加え増幅器を使います。
もっと言うと、電源が要るか、要らないかの違いと言えます。

回路構成
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フィルタ構成は反転増幅回路にコンデンサを加えただけの1次LPFです。
PCM2902の出力をオシロのFFTモードで見たとき、スプリアスや高周波ノイズのようなものは見られなかったためです。
フィルタの増幅度は、増幅の必要は無いと考えたので1倍としました。
(今使ってみると音量が足らず、増幅度は1倍では足らないですね・・・。)
また、単電源オペアンプなのでバイアスを掛けないと出力は+側しか出ません。
そのため、定石通りにオペアンプの+入力に電源の半分の電圧を加えています。

その辺にあったコンデンサからちょうどいい物を探した結果、1000 pFの物と10 kΩの抵抗でカットオフ周波数を15.9 kHzとなりました。
しかし、実測するとカットオフ周波数は31.8 kHzです。
なぜかを考えてみましょう。

どうやら原因はバイアス回路にあるようです。
オペアンプの入力インピーダンスは入力抵抗で決まりますが、バイアス回路のインピーダンスも含めて考えないといけません。
文字では伝わりにくいので等価回路を考えましょう。

オペアンプの仮想接地により、正入力と負入力の電位差は同じ、すなわち内部で繋がっている事になります。
そして、オペアンプの出力インピーダンスは0 Ωに限りなく近いとすると、内部ではグラウンドに落ちている事になります。
この二つを踏まえて等価回路を書くと・・・
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上図のようになります。
出力側のカップリングコンデンサは∞の負荷に接続しているとして無視しています(計算が面倒臭いだけ
Rd2に並列接続してあるカップリングコンデンサも無視しています。
実はこれを無視しないと計算が成立しないのです(爆
さらに、負入力と正入力が繋がっているため負入力へ電流が流れ込みます。
その入力電流はオペアンプの正入力を通過するので、分圧回路のRd1とRd2に分かれて流れます。
電源側からは常に入力電流以上の電流が流れていて、入力電流は打ち消されます。
すなわち、Rd2しか意味をなさなくなります。
よって最終的な等価回路は・・・
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上図になります。
CinがHPFを果たしている事も分かります。
さらにCfは元回路のLPFなので、周波数が0、∞に近づく時において合成インピーダンスを考えれば・・・後はもう分かりますね?
これでRinとRfの等価抵抗が求まるのでカットオフ周波数も計算できます。自分でやってみましょう。

HPFのカットオフ周波数を実測すると約1.1Hzとなりました。
ただし、どちらのカットオフ周波数も人間の可聴域を超えているので体感する事は無いでしょう。

バイアス回路のインピーダンスを無視するには?
完全に余談ですが、先の等価回路を見ると入力インピーダンスは抵抗分圧の影響を受けています。
これを無視するには単純に抵抗分圧を使わなければいいのですが、別電源を用意するわけにもいきません。
そこでもう一度オペアンプの出番です。
抵抗分圧の後にオペアンプによる電圧ホロワを加えれば、インピーダンスを0 Ωとすることができます。
本来ならこの方法を使うべきなのですが、簡単化と規模縮小のため無視しました。

ICについて
AD8531はオーディオ向きの単電源、レールツーレール出力、大出力CMOSオペアンプです。
ただ単純に「その辺にあった」というだけの理由で使いました。
+5 Vの単電源で動く物なら何でもいいでしょう。

部品について
部品もその辺にあった物を使いました。
電解コンデンサ、フィルムコンデンサ、端子以外は全てチップ素子を使っています。
これで基板サイズを大幅に節約しました。

種類 型番/規格 個数 備考
IC AD8531 2 アナログデバイセズ社製
抵抗 10 kΩ 4
100 kΩ 4
電解コンデンサ 10 μF 4 耐圧は10V以上
積層セラミックコンデンサ 0.1 μF 2
1 μF 2
10 μF 1
フィルムコンデンサ 1000 pF 2
RCA端子 シャーシ取りつけタイプ 2 赤と白
特に難しい回路ではないですし、改造する余裕はたくさんあります。
パーツにこだわったり、回路定数を変えたりしてオリジナリティを高めましょう。

筐体について
元あった筐体に追加回路用のスペースを作っておいたのですが、どうも足らなかったようです。
基板サイズを調整して何とかねじ込みました。
基板〜RCA端子は同軸ケーブルで接続するつもりでしたが、スペースの関係上直接接続しました。

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